マダニによる感染症(ライム病)

ライム病はマダニを介して人に感染する病気です。マダニに咬まれた後(刺咬後)、スピヘータの1種であるライム病ボレリアが感染して発症します。
ライム病は、コネチカット州ライムで集団発生したことから、この名前がつきました。日本では、シェルツェ・マダニの刺咬後に発生することがほとんどで、このマダニは本州中部以北の山間部に棲息しますが、北海道では、平地でもよく見られます。人への感染は、ライム病の菌に感染したダニが皮膚を刺し、1~2日付着したままになっていることで起こります。短時間の付着ではめったに感染しません。まず、ダニが刺した部位で菌が増殖し、3~32日間かけて周囲の皮膚へ広がり、血流に乗った場合は離れた臓器や皮膚にも広がります。

症状

ライム病の進行には、早期で感染が限局している時期、早期で感染が広がる時期、そして症状がいったん消えてから再度出てくる晩期という3つの段階があります。
早期限局期の典型的な症状としては、刺された場所に大きな赤い斑点が現れ、太もも、殿部(尻の部分)、胴体、わきの下によくみられます。
この紅斑は遊走性紅斑と呼ばれ、直径15センチメートルほどに広がり、しばしば中心だけ色が抜けます。痛みやかゆみはありませんが、触れるとほてった感じがします。一方、これといった症状が出ない人も約25%います。
最初に刺された部位から菌が全身に広がる時期になると、疲労感、悪寒と発熱、頭痛、項部硬直、筋肉痛や関節痛などの体調不良を訴えるようになります。腰痛、吐き気や嘔吐、のどの痛み、リンパ節の腫れが起こることもあります。こうした症状の多くは出たり消えたりしますが、体調の悪さと疲労感は何週間も続くので、紅斑が出ない場合は特に、インフルエンザやかぜと間違えられることがよくあります。
この時期に、さらに重い症状が出る場合もあります。神経の機能障害が約15%にみられ、最も多い症状が、頭痛、項部硬直、無菌性髄膜炎、顔面の片側の麻痺(まひ:ベル麻痺)などで、症状がなくなるまでに何カ月もかかることがあります。
神経の痛みや脱力感が他の部位に発生し、長期間しつこく続くことがあります。
ライム病を放置すると、最初の感染から数カ月、場合によっては何年もたってから晩期症状が現れます。晩期ライム病の約半数に関節炎が生じ、膝(ひざ)のような大きな関節の腫れと痛みが数年にわたって繰り返し起こります。

診断と治療

ライム病ボレリアを検査室で培養するのは非常に難しく、検査方法として培養の代わりに最も広く行われているのが、血液中の細菌に対する抗体価を測る方法です。ただし、ライム病の初期には抗体価が陰性のことが多く、感染していない人に陽性反応が出てしまうこともあるので、この検査だけで診断するのは適当ではありません。したがって、検査結果に加えて、典型的な症状の有無、発生地域に住んでいるか、野山へ出かけたかなどを考慮して診断します。
マダニに刺されただけで発疹などの症状が出ない場合は、一般に抗生物質は使用しません。ただし、ライム病がよくみられる地域に住んでいる場合や、刺したダニが血をいっぱい吸っている、つまり付着していた時間が長かった場合は、予防的に抗生物質を4日間ほど内服することを勧めています。ライム病は、どの段階でも抗生物質が有効ですが、合併症などを防ぐ意味からも、なるべく早期の治療が勧められます。感染初期であれば、ドキシサイクリン、アモキシシリン、ペニシリン、エリスロマイシンの服用が有効です。
晩期ライム病でも抗生物質で菌を一掃することができるので、大半の場合はそれで関節炎の痛みは治まります。

予防

マダニに刺されないよう注意することが重要です。マダにの活動期(春から夏)に出かけるときは、道を外れて茂みの中に入り込まない、服にダニがついてもすぐに見つけることができるように白っぽい服装をするなど配慮しましょう。
ジエチルトルアミド(DEET)を有効成分とする虫よけスプレーを噴霧することもダニ予防に効果的です。ダニに触れた可能性がある場合には、体のどこかについていないか点検することをお勧めします。ライム病感染は、ダニが丸1日以上かみついた状態でいて初めて起こるので、体にダニがついていないかチェックするのは有効な予防法です。
ダニが皮膚についているときは、皮膚科で切除することをお勧めします。体の部分を挟んだりして無理に虫体を剥がすと、感染を助長する可能性があります。虫体が取れても、殆どの例で、マダニの口器が皮膚に残ります。
ワセリン、アルコール、火のついたマッチやその他の刺激物の使用も避けましょう。